国民民主党本部は24日、党新型コロナウイルス対策本部を開催し、新コロナ三策を取りまとめました。
デルタ株に打ち克ち経済を回復させる 新「コロナ三策」
「デルタ株によって闘いの局面は変わった」。
米疾病対策センター(CDC)は、デルタ株は水ぼうそう並みの感染力を持ち、ワクチン接種により重症化は防げても感染する可能性があることを認めた。
ワクチン接種が先行する諸外国を見ても重症化数は少なくなっていても感染者数は拡大し続けている。
今後日本においてワクチン接種が順調に進んでも感染者数が増えることは覚悟する必要がある。
その際は、感染者数に一喜一憂するのではなく、死者・重症者・中等症者数や病床ひっ迫率等を十分踏まえて緊急事態宣言等の是非を判断する必要がある。
併せて感染者数が増えたとしても、検査を拡充することにより陽性者と陰性者を明確に判別し、陽性者には迅速で速やかな療養と隔離を、陰性者には自由な経済活動を認め、感染拡大防止と経済社会活動との両立を図っていく。
第一策 検査の拡充(見つける)
1 セルフケアを可能とする「無料自宅検査」の実施
国民民主党は、無症状者が無意識に感染を広げるという新型コロナの特徴を踏まえ、これまでPCR検査と抗原検査それぞれの特徴を有効活用し、無料検査を医療機関、高齢者施設や小・中・高等学校、幼稚園、保育園等に拡大することを求めてきたところであるが、提案から10ヶ月を経てようやく抗原検査が医療・介護の現場や職場、学校などで活用され始めている。
しかし、感染力が強いデルタ株により、自宅での感染者が増加していることも踏まえ、今後は自宅や店舗等で誰もがいつでも気軽に検査ができ、その場で検査結果が出る抗原検査を活用し、治療及び隔離すべき感染者を早期に発見する「無料自宅検査」によって、感染拡大の防止につなげていかなければならない。
また、デルタ株の出現によりワクチンが感染拡大防止の決定打とならず、感染者数が今後も増え続けることを踏まえ、デンマーク等の諸外国や広島県等の先行自治体が実施している無料検査ステーションの開設などPCR検査や抗原検査を「いつでもどこでもだれでも簡単に無料で受けられる体制」を構築し、陽性者は早期に治療及び隔離し、陰性者には行動制限を外し自由な経済活動を認めていく。
2 陰性証明を持ち歩ける「デジタル健康証明書(仮称)」
抗原検査キットや民間PCR検査と連動して、QRコードによる陰性証明を可能とするスマートフォンアプリ(デジタル健康証明書、後述)を開発し、陰性証明を簡単に持ち歩けるようにする。
3 国による検査精度管理の実施
PCR検査に比べて精度が低いと言われてきた抗原検査も日進月歩で精度は向上しており、専門家によれば仮に偽陰性(陽性)であってもそのウイルス量は他人に感染させないレベルであるとされるが、粗悪品が流通する可能性を踏まえ、薬事承認を通じて国が精度管理を行う。また、民間PCR検査についても国が精度管理を行い、陰性証明に対して国が責任を持つ。
第二策 感染拡大の防止(抑える)
1 万全な補償を前提とした移動制限の法制化
憲法22条が保障する「移動の自由」は「公共の福祉のために必要な場合には合理的な限度において制約を受ける」ものであり、災害対策基本法や原子力災害特措法等では立入禁止等が規定されている。
緊急事態宣言下における住民の外出自粛を徹底するため、欧米などで実施されている「ロックダウン」のような移動制限を法制化するため、後述する現金一律給付などの「万全な補償」とセットで、特措法第31条の6第2項及び第45条1項を改正し、都道府県知事による「要請」に加えて、応じない場合の「命令(罰則付き)」を追加する。
2 自宅療養も可能とする体制整備と治療薬の開発支援
これまで保健所が担ってきた業務(検査、入院判断、健康観察等)を地域の医療機関やかかりつけ医・訪問看護師等が担うことも可能とするとともに、抗体カクテル療法や酸素療法などの治療を実施できるようにし、早期治療により重症化を防ぐ医療体制に転換する。
併せて治療に必要な十分な量の抗体カクテルや酸素の供給が確保される体制の整備を図る。
地域の医療機関やかかりつけ医・訪問看護師等がそれぞれが保有しているデータを共有する体制を先行する自治体の例を参考として整備する。
病状が落ち着いた患者の退院・転院の基準を緩和するとともに、退院・転院が円滑に進むよう、回復後患者受入医療機関のほか老人保健施設のショートステイも活用するなど後方支援機能を強化する。
飲み薬タイプの治療薬の開発や実用化に向けた取組みを支援するとともに、アビガンやイベルメクチンなどの有効性を早急に確認し、可能な限り早期に承認を行う。
治療薬の普及やワクチン接種の進展を前提に、感染症法上の分類を2類相当から5類相当にすることを検討する。
3 中等症向けの臨時の医療施設の開設
自宅療養中のコロナ患者に対してかかりつけ医・訪問看護師等が訪問診療するのは効率も悪く、酸素投与や抗体カクテル療法も難しい。
そこで特措法31条の2に定める都道府県知事による「臨時の医療施設」の開設を支援するとともに、国(政府)が主体となって、開業医や自衛隊(医官・看護師)の協力の下、展示場や体育館等を活用し、コロナ専用の仮設病院を開設する(英国では昨年4月に全国9ヶ所に10日間程度で「野戦病院」を開設。
軍医600名が派遣された。建設・運営費は約300億円。米国でも昨年4月に陸軍工兵隊と州兵によりニューヨーク市に2週間程度で2,000人以上を収容する施設を開設。)。
また、医療従事者の確保にあたっては、東日本大震災時に全国の医師や看護師を被災地に派遣するために調整機能を果たした「被災者健康支援連絡協議会」(代表:日本医師会会長)の枠組みも活用する。
4 医療ひっ迫の解消
国立病院機構の全国140病院の総病床数5万超のうちコロナ患者向けはわずか1800程度(約4%)。地域医療機能推進機構の57病院もコロナ病床比率は約6%、国公立大学の病院も約11%程度にとどまっており、公的な医療機関が率先してコロナ患者を受入れる体制を国が主導して早急に整備する。
また、民間病院によるコロナ患者受入れを増やすため、コロナ患者受入れに関して都道府県知事から医療機関に対する「勧告(応じない場合は公表)」を「指示(従わない場合は罰則)」に引き上げるため感染症法16条の2を改正する他、コロナ患者を受入れる医療機関に対しては診療報酬で減収分を補填する仕組みを導入する。
5 ワクチン接種の重点化と開発支援
移動を伴う職業や人との接触機会の多い職業、感染が拡大し医療がひっ迫している地域(首都圏や沖縄県等)の重症化しやすい世代(40~50代)や、妊婦及び感染が急増している若者等に優先してワクチン接種を行う。
ワクチン開発を国が主導するとともに、接種の有無と重症化率の因果関係を明確にしてメリットとリスクを明確化する。健康被害は迅速かつ確実に救済する。
6 水際対策の強化
海外からの入国者については、14日間の宿泊施設または自宅での待機と健康状態や位置情報等の報告が求められているが、実際には、メール確認や位置情報確認に応じているのは6割程度にとどまっており、宿泊施設または自宅で待機しているのか否か確認できていない。
このため検疫法16条の2を改正し、メール確認や位置情報確認への報告を義務化(罰則付き)し、宿泊施設または自宅での待機の遵守を図り、もって水際対策を強化する。
第三策 経済・社会活動との両立(動かす)
1 「まん延防止協力金」(国民一律10万円・低所得者20万円)の支給【20兆円】
国民に対して移動制限等によるまん延防止措置への協力金として迅速に給付するため、全国民一律に現金10万円を給付するとともに、長引くコロナ禍で生活に困窮する低所得者に対しては更に10万円の給付を上乗せする。
迅速な給付が行われるよう「所得連動型給付方式」(申請に応じて一旦無条件で支給し、一定以上の高所得者に対して年末の確定申告時に所得税に上乗せして課税する方式)によって支給する。
2 コロナ禍収束までの時限的消費税ゼロ【最大20兆円】
逆進性の強い消費税はコロナ禍に苦しむ低所得者ほど重い負担となっている。
また、政府や都道府県による各種給付に時間がかかる以上、減税の方が結果的に恩恵を国民に早く届けることができる。コロナ禍による景気低迷に苦しむ事業者を救うためにも、消費を喚起し、需要を増大させ、景気回復に資する消費税ゼロを実行する。(消費税の時限的な納税免除)
3 「事業規模に応じた給付金」による減収補償【10兆円】
金額が少なく、支給が遅く、不公平との批判が強い「時短協力金」「月次支援金」に代わって、地域や業種を問わず、事業規模に応じて固定費(家賃・人件費等)の最大90%(上限2億円)を金融機関を介在させ迅速に支給する「事業規模に応じた給付金」を支給し、コロナ禍による売上減少分を補償する。
4 総合支援資金等の生活困窮者支援策の拡充
コロナ禍で仕事を失い生活が困窮する人々のラストリゾートとなっている総合支援資金の再貸付延長や生活困窮者自立支援金の要件緩和を図るとともに、税金・社会保険料・公共料金・携帯電話料金等の支払猶予延長・免除を行う。
5 「デジタル健康証明書(仮称)」の活用(再掲)
デルタ株により当面感染拡大は収まらないが、その間これまでと同様の休業・時短要請を行えば経済は崩壊する。感染防止と経済活動との両立を図るため、検査陰性やワクチン接種を証明する「デジタル健康証明書(仮称)」を活用し、同証明書の持参者には行動制限を外し自由な経済活動を認める。