【国民民主党学生部】⾮正規雇⽤と貧困

みなさんこんにちは。
学⽣部政策局所属の折笠と申します。

今回は「⾮正規雇⽤と貧困」と題しまして、⾮正規雇⽤の現状について概観したのち、⾮正規雇⽤で働く⼈々が貧困状態に陥⼊りつつあると考えられる現状を、社会学の視点から解説していきたいと思います。

⾮正規問題はこれから就職する我々学⽣や若者にとって無縁の話ではなく、そのような働き⽅を強いられる可能性は⼤いにあります。

また、さまざまな政策を考えていく際にも重要なファクターとなりうる可能性も持っています。

⾮正規雇⽤者が置かれる環境を理解してより良い政策・制度を考えていきましょう。

最後までお読みいただけると嬉しいです!

⾮正規雇⽤とは?

⾮正規雇⽤は⼀定期間のみの雇⽤契約に限定して労働することを⾔います。

1990 年台から労働者派遣法などの労働法が改正されることによって、その被雇⽤者数は⼤幅に増加しました。

現在では労働者の約 35%が⾮正規雇⽤です。

正規雇⽤との違いは

①契約期間の有無
②福利厚⽣の差

などが挙げられます。

⾮正規雇⽤の問題点

①契約期間の有無

⾮正規雇⽤では契約期間が設けられていることが多いですが、これによる弊害が2つ考えられます。

1つ⽬は、技能を獲得できないことです。

労働における技能は⼀朝⼀⼣では⾝につきません。

さらに、企業や産業ごとに求められているスキルが異なるため、契約後に他の会社と労働契約を結ぼうにも企業が求めるスキルを有していないため、正規雇⽤での採⽤が⾒送られ再び⾮正規雇⽤の職務に就くほかない場合が考えられます。
2つ⽬は、社会における居場所を確保することが難しいことです。

⼈が社会に⽣きる上で、「職場」という場所は重要な役割を果たします。

もちろん⾯倒なしがらみも存在しています。
しかし、ここでは似た職務や職場を共通することで他者から「承認」され他者を「承認」できます。

これは、⼈がアイデンティティを形成し維持するのに重要な役割を果たしているのです。

しかし、⾮正規雇⽤では⻑期的な関係を結ぶことできないがわかっているので、⾯倒ごとを被るかもしれない⼈付き合いを積極的にやろうとはせず

これによって孤⽴しアイデンティティを喪失してしまう可能性が往々にしてあると考えられます。
また、流動的にならざるをえない⽣活となるので、旧来から仲が良かった友⼈や家族などとの疎遠が考えられます。

これによってさらに社会における居場所を確保するのが難しくなります。

②福利厚⽣の違い

正規と⾮正規では福利厚⽣は異なることが多いです。

むしろ福利厚⽣の費⽤を減らしたいがために、企業は⾮正規雇⽤を採⽤したがると考えられます。

この点はのちに解説します。
「同⼀労働・同⼀賃⾦」の流れから多少賃⾦については改善が⾒られたと考えられますが、ボーナスがなかったり(あったとしても⽐較して少額)、通勤⼿当など各種⼿当が⽀給されないといった違いが存在しています。

これによって、⾮正規雇⽤労働者は正規雇⽤と⽐べて経済的に不安定な⽣活を強いられて、貯蓄や資産形成などができず、次のステップのライフスタイルを獲得できないといった弊害が考えられます。

実際、正規雇⽤と⾮正規雇⽤では未婚率に⼤きな差があります。

⾮正規雇⽤と企業

企業はなぜ⾮正規雇⽤を採⽤したがるのでしょうか。

なぜなら、⾮正規雇⽤が安いからです。

先ほど述べたように、福利厚⽣費を⽀払う必要がないので⼈件費というコストを下げることができ、これによって⾼い利益を得ることが可能になります。

また、経済の先⾏きが不透明な状況において「お試し」で雇うことによって、不必要なときに切ることができる使い勝⼿の良い労働⼒であると⾔えます。
さらに、⾮正規雇⽤は節税になります。

消費税の納付税額には「仕⼊れ税額控除」という制度が存在しており、企業はその対象の1つである「外注費」を⽤いることで⽀払い税額を少なくできます。

仕組みは以下の通りです。

⼀般的に、仕⼊れをする際は消費税が含まれた額を「仕⼊れ」勘定で仕分けします。

「売上」が確定したのちに、「売上×10%(消費税率)−仕⼊れ×10%」でその企業の消費税の納付額を決定します。

これは、⼆重課税を防ぐための⽅法です。

(詳しい議論は簿記や会計学を参照してください)少し話がそれましたが、⾮正規雇⽤はこのような処理の対象となる「外注費」とすることによって消費税納付額を少なくすることができます。

正規雇⽤などの⼈件費では節税にならないのに対して、⾮正規雇⽤ならば上の式の「仕⼊れ×10%」の部分を増やすことによって、その計算結果を⼩さくすることができます。だから財界は消費税増税を⽀持するとかしないとか・・・。

本論とは少し外れますが、これが消費増税をしてはいけない理由の⼀つになります。

消費増税をすれば⾮正規雇⽤を増やす強いインセンティブが存在するので、今以上に⾮正規雇⽤の⼈数が増えることになります。

貧困とは何か

以下では貧困を含めた議論に移っていきたいと思います。

皆さんは貧困と聞いてどのようにイメージしますか。

⼀般的に貧困とは、「資源が不⾜して、⽣活が苦しく、その結果⽣命や健康に影響を与える」状態であるとされます。

しかし、これは経済⾯に着⽬した⼀元的な⾒⽅であると⾔えます。

貧困とは経済的なものにとどまらない、極めて社会的な現象であると⾔えます。

貧困のもたらす問題を考慮すると、貧困とは「⽣活の基礎をなす財貨が得られないが故の⼈間の⾃由と潜在的な膨⼤な喪失」や、「健康が脅かされ寿命が短く、健康不良のために仕事への努⼒が弱まり、⼦供のその後の能⼒と⽣産性に取り返しのつかない打撃が⽣じる」(駒村 2023)といったことを意味すると考えられます。

社会的排除

社会学において「社会的排除」という現象があることが明らかにされています。

「社会的排除」とは、物質的・⾦銭的⽋如のみならず、居住、教育、就労などの多次元の領域において個⼈が排除され、社会的交流や社会参加さえも阻まれ、徐々に社会の周縁に追いやられていくことを指します。

これはどのようなメカニズムで進むのでしょうか。

財や権限を既得する層や集団やそれと連動した国家権⼒が、特定の社会的カテゴリーを資格なしとして除外することで財や権限から締め出します。

これは「当たり前」、あるいは「仕⽅がない」こととして遂⾏されます。

例えば、⼥性は労働市場から排除される傾向にあります。

このように貧困はマルクス的な資本による根源的な搾取のみならず、国家や社会といったアクター間の「連携」の結果としても理解される必要があります。

社会的排除と⾮正規雇⽤の拡⼤メカニズム

⾮正規雇⽤とは、労働市場において排除された結果であると⾔えます。

例えば、学歴や能⼒が相対的に劣る者、⼥性や外国⼈などの労働市場におけるマイノリティや社会的弱者が労働市場から排除されていると⾔えます。

これによって、充実した社会⽣活や社会的関係の構築が難しくなり、徐々に社会の周縁に追いやられていると考えられます。
労働市場の社会的排除は、国家の法制度に裏付けられた排除です。

まず規制緩和で新しい雇⽤形態ができ、パート労働者として⼥性(主に既婚)を吸収しました。

⽇本の⼀般的な結婚形態であった、⼀⽅が稼ぎ頭で、もう⼀⽅がそれを補うという労働形態が、そのような労働市場を確⽴していきました。

しかし、この労働市場は正規の労働市場から分断されて、賃⾦⽔準が低いまま保たれました。

もちろん、これが直接貧困を拡⼤させたとは⾔えません。

しかし、そのような労働市場に参加する者の労働⼒に、低い価値しか⾒出さない社会的なイデオロギーが形成され、それに沿ってそのようなカテゴリーに属する⼈々を周縁労働⼒の供給源として当たり前のことのように利⽤しました

このような環境が固定化され、さらに国家や社会による「協⼒」のもとこれを拡⼤・膨張させていきました。

⾮正規雇⽤と貧困

もちろん、⾮正規雇⽤の増⼤が貧困の拡⼤と並⾏的に動いているとは正確には⾔えません。

しかし、「⾮正規雇⽤の労働者になった多くの若年層は、家族の経済⼒の程度によって、もしくは家族からの離脱の程度に応じて、年齢を重ねるとともに貧困の領域へと捕らわれていく」ことが考えられます(⻄澤 2019)。

実際、⾮正規雇⽤の拡⼤期であった就職氷河期世代の年⾦に関する問題が存在しています。

⾮正規雇⽤労働者は正規雇⽤と⽐べて賃⾦や福利厚⽣が弱いので、社会保険に加⼊する余⼒が少なく加⼊率が低いです。

彼らが年⾦を受給する世代になると⽉7万円に満たない国⺠年⾦しか受け取れないと⾔われています(⼩林2018)。

もちろんこれは、⽣活保護の受給対象になります。

このように、⾮正規雇⽤は時間をかけて貧困層を拡⼤していると⾔えます。

ちなみに、この年⾦の問題は⽣活保護費の⼤幅な増加を招き、国家財政に甚⼤な影響を与えると⾔えます。

(この意味において、消費税の増税は国家財政に何もプラスにならない可能性を⽰唆しています。)

このような意味おいても、⾮正規問題は⾮常に重要な政策的課題の⼀つと⾔えるでしょう。

⾮正規雇⽤問題をどうするか

以上のように、⾮正規雇⽤は若者のその後の⼈⽣に⼤きな影響を与える可能性があるという意味において、私たちに重くのしかかる問題であると⾔えます。

もちろん、⾮正規雇⽤の全てが悪いわけではありません。

固定化しない職場環境を志向する⼈、柔軟なライフスタイルを望む⼈など、正規雇⽤では得られない可能性が⾼いメリットを志向する⼈も社会に存在しているでしょう。

具体的にどのように労働市場にメスを⼊れていくか、政策を考えるのは困難を極めます。

この問題はさまざまな視点から知恵を出し合って⽅法を⾒つけなければ解決しないでしょう。

「批判だけかよ」と⾔われないように(笑)、これに関わる改善策を提⽰します。

それは、消費税の引き下げもしくは廃⽌、少なくとも消費税増税はしないことです。

やはり、前述した通り消費税の存在は企業が⾮正規雇⽤を増⼤させるインセンティブが存在しているので、これが⾮正規問題の根源の⼀つであると⾔えます。

外注という契約⽅法の構造上、仕⼊れ税額控除の対象とするのは会計学的に合理的であると⾔えます。

したがって、消費税の税率をいじって企業がこの選択をするメリットを少なくする⽅法が正しいと⾔えます。

消費税増税は国家財政にとって全く意味のない⾏為です。

先ほども述べたように、⾮正規雇⽤の拡⼤は⽣活保護費といった社会保障費が増⼤する可能性が存在しており、増税をすれば企業の合理的な選択から⾮正規雇⽤は増えるので、国家財政を安定させるため(?)の増税が逆に国家財政を不安定化させる可能性があるからです。

短期的には税収が増えて財政にプラスかもしれませんが、⻑期的には増税分を相殺するほどの費⽤がかかる恐れがあり、いわば問題を先送りにしていると⾔えます。

⾮正規雇⽤への直接的な介⼊ではありませんが、このような政策が良いと考えられます。

最後に

以上のように、⾮正規雇⽤について概観し、⾮正規雇⽤の貧困化メカニズムを説明してきました。

⾮正規問題は我々若者にとって⾮常に重⼤な問題の⼀つであると同時に、国家による影響や役割が重⼤な問題でもあります。

これをこれからどうすれば良いのかを考える際に使える、社会学的な視点を提供できていたならば幸いです。

このような⾮常に⻑い論考を最後までお読みいただいて本当にありがとうございました!

 

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参考⽂献
・貧困の諸相(2023) 駒村康平 渡辺久⾥⼦ 放送⼤学教材
・⼈間にとって貧困とは何か(2019) ⻄澤晃彦 放送⼤学教材
・貧者の領域 誰が排除されているのか(2010) ⻄澤晃彦 河出ブックス
・都市の社会学 社会がかたちをあらわすとき(2010) 町村敬志 ⻄澤晃彦 有斐閣
・ルポ 中年フリーター(2018) ⼩林美希 「働けない働き盛り」の貧困 NHK 出版新書
・会計学基礎論(2019) 神⼾⼤学会計学研究室 同⽂館出版
・⾮正規男性 6 割が未婚 「普通の家族」は終わりつつある 2023年7⽉15⽇閲覧

・⽇本社会を崩壊させる消費税−斎藤貴男さん講演(2) 北海道勤労者医療協会 2023年7⽉15⽇閲覧

 

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